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SAD VACATION 【監督:青山真治】 [君にMOVIEを!]

「HELPLESS」を観たときに、何も心に残らなくて真っ白になった。
あまりに凝視をしすぎたのか、それとも自分の感性が足りないのか。
自己嫌悪になるくらい何も読み込めなかった。

1日の中に起きた出来事。

その出来事しか理解出来なくて、それが本当にビックリした。
些細な箇所も逃さないようにしている。
どこかにヒントがあって。
些細なものほど。
些細な言葉であればあるほど。
その映画の奥ゆかしさが、更に娯楽を超えた範疇の中で自分の中で思い出となり輝き、
「いいものを観た」という満足と優越の支配。
フィルムの中にしか存在しないはずのものがあって。
それが自分の価値観を向上させる希有なものだから、必死に観るようになっている。

そんな覚悟と「SAD VACATION」へ続くというのならば、覚悟も並大抵ではなく。
それはそれは、隙間すら逃した覚えはない。

それでいても「HELPLESS」の物語の滑らかさといえば。
液体が流れるような面持ち。
手の中には水滴ほどしか残らなかった。

そんな水滴を頼りに、念願だった「SAD VACATION」に望む。

結論からいってしまえば、HELPLESSを観ていないと飲み込めない尺に存在するもの。
10年後という、明白な設定は見ていても無理がなく。
事実時間も10年強の時間を経ている。
それでいても、序章を組み上げた先の明確さ。
HELPLESSで不十分だと想ったものが、完璧に充足され。

それでいて、新しい物語までキッチリ完結させる脚本には、正直震えた。

無理が存在して、端折る部分の存在は当然あるにしても。
端折り方が丁寧な分、無理が無い。

1人1人にスポットを当てる分。
1人1人の物語も完結させながら、転がる物語には爽快さすらある。
理解の範疇を逸脱しない。

ふんだんに散らされた物語の欠片は、1ピースとして欠落を許されない欠片。
誰1人欠けることは許されない、最低限最小限で最高のキャスティング。ストーリー。

浅野忠信のあの演技、あの空気は浅野にしか出来ないし、
石田えりの空気も、あの瞬間にその評価を確信として固定させる。

あまりに物語の結びが、綺麗にほどけたものだから。
それが堪らなかった。
久しくこんな気持ちはない。

因果が無ければ、崩れない現実。
呵責に耐えがたい過去と通ずる現在。

全てのことは、今この瞬間から過去ならば。
今のことなど、未来と比較したら取るに足らない。
重要なのは先のこと。
先に咲くものを得たいのならば。
その為に種をまき。
栄養を与え。
その咲く瞬間を待つ。
それもただ待つのではなく、膨大な時間と労力を賭しても咲かせたい無償。

母親の子供への愛は無償。
そこに辿り着くまでの疑念や誤解、無知は完璧に物語に入り組んでいて。

時々、「行き過ぎた場面じゃないか?」と想うとこも。
結局極端な話「無償」なわけだから、そこに損得にまつわる駆け引きなど存在しない。
という結論。
短絡的に言えば、滑稽。

そういう流れの中での物語なのに。
母親の母性と括ってしまえば、それで終わってしまう話にも関わらず。
その因果への明らかな回答の出現まで。
最期を迎えないと物語は払拭されない。
全ての遺恨がほどけた瞬間に発する言葉に。
自分も共鳴。
ラストシーンまであと少しというところ。

巡りあいについての話も。
「偶然は存在せず、そこには必然しかないということ。」

想いの交錯ではなく。
何も知らない事実が歪ませたわけでもない。
全ては最初から決まっていたことで、それが現実。

書ききれないこともある。

本当は、「ここ」と「ここ」が接点で「ここ」に流れると書きたい。
人それぞれの感じる主眼は違うので、答えは1つとはならないものの。
九州の方言で若干のニュアンスを変えながら、そういう幾つもの点と点を線に結びながら、
答えを追いかける映画の見方が最近の快楽。
点在していればしているほど。
それがたまらなく労力を割いても、花を摘みとる感じにも似ていて。

観ていて、最期に流れ込む感情とか、経緯。
スコールが、一気に晴れる。
虹すら浮かぶような。
そんな映画の結びに。
シネマライズを、映画館を出て吸い込む煙草の爽快と言ったら。
久しく無かった。

シャボン玉は、必要なもの。
ラストシーンはそこではなく、その前にあって・・・・。

冒頭。
静かに流れるジョニー・サンダースを聞きながら。
僕はやっぱりジョニー・サンダースが、苦手だと想った。

僕の知っているジョニーサンダースは、逝き急いで。
それでいて、あんなにも生きることを渇望して。
・・・・そんなイメージがある。
楽観的に愛せるような音楽じゃないのが、感じれてしまう。
生命を削るような音楽は、やはり心地良いものではなく。
そこで感じるものは虚しく儚く、そして美しいと想ってしまう。
その矛盾に気持ちが耐えられない。

あくまで休暇。
しかしながら、休暇とは必ずしもHAPPYなものとは限らない。
SAD VACATION。

そういう休暇を経ても、結局は日々に帰る、戻る。
なぜならば、また日々を生きるから。


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コメント 4

nicola

ヒマになったので両方観てみるよ。。。
キミの文章を読んでたらね。。
なんだか無性に観たくなったよ。
by nicola (2007-10-17 21:46) 

ルースターズ

>にこ
映画はもうすぐ終わってしまうよ(苦笑)
新宿はレイトショーだね。
http://www.sadvacation.jp/theater.html

凄く良い。
僕は少なくてもかなり嬉しくなった。
さりげない会話の中に、繋がる核心があって。
HELPLESSは正直、どうにもならなかった。
だからそれをどうにも出来なかった自分が、
この映画で借りを返せた気分になれた(笑

凄くこの文章は気に入ってます。
書きたいこと全部じゃないけど、結構書けたと想います。

こういう文章って得てして、リアクションが薄いのいつも(笑
ニコありがとね♪

是非眺めてみてください。
DVDでも大丈夫。覚えていてくれさえいれば(笑
by ルースターズ (2007-10-17 22:35) 

ソヒア

先に咲くものを得たいのならば。
その為に種をまき。
栄養を与え。

これ、よくわかる(U_U)


11年前に演じたヤツよね、HELPLESS、浅野忠信が。
先日R25を読んでてね、今、あっこれか・・って思い出したよ。
まずはHELPLESSを観なきゃだね。

余談だけど、浅野忠信ってデビューが金八先生だったって、R25で知りました。
これって、有名なの?
知らなかった.....(x_x;)
by ソヒア (2007-10-18 00:33) 

ルースターズ

>ソヒア様
知ってますよ(笑)
僕浅野フリークですから。
浅尾忠信の映画はほとんど観てますし、表紙の雑誌もほとんど(笑

昔はかっこいいという憧れでしたが、
今は日本が誇る俳優として観ていますが(笑

CHARAが好きだった時期でしたし、PICNICが初めての出会いでした。
by ルースターズ (2007-10-18 07:18) 

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