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君にロックンロールを!in 津軽 【1日目:青森県立美術館】 [君にTRAVELを!]

弘前下車を青森下車に変えた理由が、「青森県立美術館」

約10時間の高速バスの旅路。
19日に東北に降った少し早目の雪は、岩手からの景色を銀色にしていた。

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あおもり駅に降り立つと、賑わいはなく。
商店も開ききらない朝を感じながら。
ローカルバスで青森県立美術館に向かう。

せっかく何も考えない旅ならば、せめて地方の芸術を。
津軽の民芸を改めて見たいと。
青森の芸術家の渾身を焼き付けたい気持ちが強くありこのタイミングを逃すまいと。

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駅から少し離れ。
周りの雪化粧と同じように。
建物の下に行けば。
更に白い流線型が空を遮り、雲を白の天井が切り取る。

降った雪が誰に踏まれることなく蒸発する刹那な時間。
息の白さにたばこの煙二乗。

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外観に辿りついただけで、今日ここに来て良かったと思える安堵。

館内は綺麗で天井がどこまでも高い。
そして雪で覆われた旧緑園もまた続く。

この広さを以てすれば、子供たちもまた美術館の存在を忘れないだろうし、
何かの折に美術館に行こうでもとなると思う。

シャガールが迎えてくれる始まりだが。
むしろシャガールは、青森県民のためのものであろう。
ボクらのような青森を感じに来ている人間には、そのシャガールの存在など無くてもいい。

ほとんど横目で。

小難しい美術芸術の中に、誰もがわかりやすい絵本の1ページのような。
メッセージを無視してしまえば、小さな子供にも印象深く残る「奈良美智」の作品群。

あの女の子。

でも少し奈良美智の作品楽しみにしてたんだけど。
なんだか、ぐっさりこなかったのは、随分奈良作品も目の当たりにしてるのとそれ以上に、
誰という限定ではなく。
「青森県立美術館に何があるのか?」という興味が強かったこと。

奈良美智の作品という足がかりは、足がかりでしかなく。
この後、ボクは寺山修司の生い立ちなるものをのんびり眺めては、気持ちの高揚に向かうのです。

奈良美智を見るにあたり。
ボクは美術館に入る前からラモーンズを爆音で聞きながら。
奈良モードに入ったのですが。
奈良作品を終えて、寺山修司を見る頃には、浅川マキにしてみたり。
なんだかそんなことですら楽しみを持ってみたり。

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しかしながら、奈良・寺山よりも何より印象深かったのは民芸。

民芸という田畑耕す人の営みだけでは食べることが難しい季節の厳しさの中で
生まれた営みの手段。
時間を惜しまず手間のかかった仕事であり。
その仕事は、日用品や日常を昇華して「民芸」という芸術の頂きに上った。

青森のはそういった民芸が色濃くあり。
その一点一点が、絢爛でありながら使い込まれた味のある物だった。

綺麗な装飾な訳ではないが、確実に手間と苦労が入っている美しさであり。
芸術品にしようとして、作成するのではなく。
その物を愛しく想う気持ちがこめられてる気にもなる。

子供の頃から祖父母の家で見たようなものばかりだったが、
それとは違いその質の高さには、うっとりしてしまう。



そして棟方志功。
BGMは既に高橋竹山に切り替わり。
津軽三味線の嵐の中、あの板画を見ると、気持ちが高揚してくるのです、不思議と。
真っ直ぐで深く、答えを1つとせず。
幾つもの選択肢を自分に課しながら、形にする作業の結晶。
また、いつも見るのは色が綺麗についているものが多いが。

今回見た作品は、完全に濃淡の世界。
この濃淡の世界は、後日板画の世界と青森の風景が
とても一貫性と説得力があるんだと勝手に解釈するに至る。

「太宰を散り巻く画家達」
というコーナーでの「小館善四郎」の絵は本当に衝撃だった。
(太宰の「津軽」は結局読みきれなかった・・・(苦笑)

深く淡かった。
絵、全体に思うことだけれど、全体的にトーンは暗い。

なぜ暗いのか?とも思ったけれど。
冬の時間と夏の時間では、青森の人の過ごし方も随分異なると思う。
それが現代でなければ尚更で。

雪深い景色に身を置き、絵を描く時間も夏の日に比べれば、
家の中に閉じこもる冬の日の方が長くなると勝手に想う。

冬の寒く雪深さと薄暗い空間。
今回の旅行でもそうだったが、雨や雪は落ちずとも分厚い雲が上空を覆い、彩かな光は射さない。
津軽はこんな天気だよと言われた。

曇り空とも違う印象の雲。

そんな中で林檎の収穫も終わり、木々を染めていた赤のドットも。
きれい残らず収穫され拾われ。
山の畑の景色も変わり。
冬独特の沈んだ色合いの中に。

気持ちも晴れやかとはいかない。

発光するかのような鮮烈を思い浮かべるなら。
やはり「紅」林檎の赤。

小館氏の絵は津軽そのものだったんだと、そう思ったのはその後のことで。

この時には「暗い色の中の発光」という解釈程度でしかなかったが。
翌日、車に乗りながら。
景色に目をやると。不意に小館氏の絵を思い出したわけであります。

檸檬と林檎。
そしてそれを包む、淡く荘厳さも兼ね備えた静かな色。
檸檬と林檎が、まるで暗闇に灯るろうそくのような美しさと明るさを放つ。

「赤衣少女」も静かに燃ゆる火のような静けさと美しさがあったので、
本当に釘付けになってしまった。

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そしてまさかの澤田教一(沢田教一)に驚いた。
澤田教一が青森出身にも驚いた。
そして寺山修司と同級生だというとことか(苦笑)

あの空気。
あの圧迫に緊迫。
見るものを圧倒するのは、空間の切り取りと言うよりも。
その場所に連れて行ってくれている。
それもその時間軸へも。
悲惨な写真ではなく、何気ない写真がそういう空気を含むのだから。
戦争というものがいかに特別な空間で空気になることが、見え隠れする。

決して死体や川を渡るベトナムの人の写真ばかりじゃない。
街でアオザイを着る美しい女性の写真や子供の笑顔。
悲惨さだけではなく、その場所にある喜怒哀楽をいかんなく切り取った写真が飾られていた。

また沢田教一と言う人は、何気ない仕草であったり、恐怖や悲惨な中に咲く花のような瞬間を
見逃すことなく、残した写真家だったと思う。

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来年、小島一郎の写真展が行われるそうだが、非常に見たい。
小島一郎の写真は見た瞬間に飲み込まれます。

あんな写真みたことが無いです。
芸術だとか瞬間の切り取りだとかじゃなくて、改めて写真はセンスであり。
瞬間を見逃さないというよりは、その瞬間に立ち会う運命があると。
そう思ったりもします。

街に溢れる日常を切り取ることよりも、より過酷な環境や生活の中で、
その生活が本当に瀕している切迫を感じ、またその写真が過酷さをよりリアルなものにする。

のほほん風景など吐き捨てるかのような。
荒波のようなフィルムがあったと思うと、本当に見たかった。
写真集もしくは回顧展によるパンフレットを手に入れたいと切望しています。

そんな時間を過ごし。
外に少しばかりの光が射すようになると。
白かった雪は強く光を撥ね退け。
身体を突き刺します。

思ったほどの寒さも感じず。
そして、ここが青森だという実感を常に感じながら作品を見て。
沢山の気持ちも貰えました。

PA0_0251.JPG

とても有意義な時間であったとともに。
このような季節に来れたのもまためぐり合わせかなと。
上着を羽織り、ミュージアムショップに行くと。

そこは何度回っても、面白くも特徴もなく。
とても残念でした。
あれだけの気品と三内丸山に隣接し、歴史と今を表裏にしている中で、
改めて、「青森」の人がお金に執着が無いということを感じたりもしました(苦笑)

奈良グッズはおそらく東京でも買えるでしょうし、弘前のharappaの方が品揃えも良かった。
棟方もやはり、記念館の方がよりあるのでしょう。
寺山グッズにしても然り。
ほとんど何も買わなかったが、買わなかったんじゃなくて、何も無くて買えなかった感じ。

県外の人向け、それは足を運んでその場所にある絵画を感じる人向けではなくて。
偶然来た観光客や地元の人用に近い感じ。

ここで売らなくてどうする?!ここでお金にしなくてどうする?!という気持ちもありました。

民芸のような気質ではなくても。
美術館の入館料以上の得たものがあった分。
やはりミュージアムショップで散財出来るほどの作品展示内容なのだから。

その点だけは残念極まりなかった。

また館内スタッフが多くて、常に監視されてる感じ。
ブルックリンに行った時というか、あの感じでは小さい子供たちが、
本物を目の当たりにしながら芸術の授業に興じることが出来るのかな?と思ったりしたけれど。

シャガールは、そう考えると自由な空間で自由に芸術に触れるには、
大きな作品が望ましいとそうも感じました。
学習施設としても、随分と品のある感じかもしれない。

ただボク的には、シャガールなんかより優れた地元の芸術家の遺産の方が、
何倍も自分たちよりも近くに感じれて。
その中から地元を愛しく感じることが出来ればいいんじゃないかな?とそう思いました。

金沢21世紀美術館もステキだったけど、この青森県立美術館もまた。
地元の息吹の真ん中に立つ素晴らしい場所だとそう思いました。
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コメント 10

アコ

晴れの日より曇りの日が圧倒的に多いのが東北の特徴のひとつだと思います。素直に言っちゃうと広い場所にいるのに閉塞感が拭い去れないようなそんな感じ。

なんつってまだ青森だけは行ったことがないんですが(苦笑)

奈良さんでわーっていうより民芸に注目なんて素敵です。かっこいいです。
by アコ (2008-12-02 17:41) 

kurohani

青森県立美術館行かれたのですね。羨ましい〜!何時か行ってみたいです。奈良さん作品あまりぐっと来なかった様ですね(笑)民藝、かっこ良いですね。小館善四郎、澤田教一作品あまり詳しく無いのですが良さそうです。そう言えば太宰の故郷ですものね〜。
by kurohani (2008-12-03 13:08) 

TBM

青森は、まだ行ったことないです。
東北は、仙台までで止まってます...
いずれ、「寺山修司記念館」など行かねばとは思っていますが、
その際、この「青森県立美術館」にも、足を踏み入れたいと
思います。
懐の広さが感じられて、実に興味深い!
by TBM (2008-12-03 23:55) 

ローリー

お〜青森はもう雪かぁ。
寒そうだね〜。

地方都市に行って、これだけ得るものがあるというのは素晴らしい!
いつでも感受性は豊かにしておきたいものだと思ったよ。この記事読んで。

しかし、夜行バスの旅路は四十路にはツライw
by ローリー (2008-12-04 23:04) 

FUCKINTOSH66

おかえりなちゃい★

ぢゃー今度は、広島現代美術館(MOCA)オススメだぢぇっ(笑)
山の上、見晴しもよくって、けっこー濃いコレクションで
http://www.hcmca.cf.city.hiroshima.jp/web/index.html

帰りにタコ刺し食って最高〜みたいな♪
あぁ、それって夏だね(笑)
ぐわしっ★
by FUCKINTOSH66 (2008-12-07 13:18) 

ルースターズ

>アコちゃん
天井が低い要領と同じで、空が低いってことかな・・・。
故に、閉塞感。
金沢もそんな感じつってたな。

民芸は凄いよ。
ここでしか見れないし、この風土じゃなくちゃ出来ない。
芸術家はいない。
でもここで生きるために必要な文化や、生き方。

そう考えると芸術の何倍も「生」を感じてしまう。

芸術とはまったく違うものでありながら、芸術。
時間も魂も、命も削ってる点では同じだからだろうな・・・。

by ルースターズ (2008-12-23 10:32) 

ルースターズ

>kurohani様
奈良さんの作品って東京でも見てますしね。
もっとどっかぁーんて来るかなって。
期待しすぎちゃったのかも。

でもでも、奈良さんの作品も目当ての1つだったんですよ(笑)

こういう地方の美術館に行かないと知りえない一期一会の
絵描きさんって貴重。

それこそこの場所じゃないと味わえないというか。
太宰の関連というくくりで、展覧会もやってましたし。
やっぱり行ってよかったです。

民藝この変換が素直に出てこない(笑)
Kurohaniさんのが正解です、横着しました、自分(笑
by ルースターズ (2008-12-23 10:39) 

ルースターズ

>TBM様
寺山記念館とこの美術館もまた地味に距離があるんです(笑)

ボクも今度機会があれば三沢のほうに行ってみたいと
思っています。

美人市議なんかに頼らなくても、八戸も結構イカシテルと
思うんっすけどね(笑
by ルースターズ (2008-12-23 10:41) 

ルースターズ

>ローリー様
感受性豊かにというのは大切かもしれません・・・・。

好奇心も伴って。
地方都市って活気は無いけど、必ず人が通り過ぎた形跡があって。
それが川になって静かだけど脈々と流れてるみたいな。

大阪編は、やりすぎてお蔵入りしましたけどね(笑)
あい×んでハシャギすぎて自粛(笑
by ルースターズ (2008-12-23 10:44) 

ルースターズ

>ZIN様
球場も新しくなって、広島には来年必ず行くので
その際には行ってきます!!!

今回を契機に、地方都市=美術館を忘れないようにするつもりです。
いい場所教えてくれてありがとうございます♪
by ルースターズ (2008-12-23 10:48) 

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