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ゆらゆら帝国@横浜BLITZ [LIVE OR DIE ?]

数日前に突然沸いた横浜ブリッツへの誘い。
ゆらゆら帝国入り口の開帳。

友達の用意してくれたチケットの整理番号は目を見張るほど若く。
約10年ぶりにライブハウス最前列を頂く。

Tシャツとリストバンドで武装してた頃の話ならば、
そこがゴールかのような暴れっぷりの果て。
酸欠寸前の世界を探してた時代でも場所に執着したことはない。

しかしながらゆらゆら帝国ならば。
一番前で見てみたい欲望はあった。
ただ動物園の檻の一番前で生態系を観察するのにも似ている。

1時間も前から、そこから動けない苦痛に。
友達はビールを差し出してくれ。
小便の悪夢を感じながら。
流れ込むビールの温度の低さと美味さに込み上げる期待の感情二乗。

衝撃の目前。
ギターの弦のまばゆさすら美しい。
ステージに点在するゴミすら正確に。
橙色のいつもアンプが玉座のように鎮座し、主を待つ。

そんな景色の折、あっと言う間に埋まる会場。
以前のような粘着質な熱気はない。
そこにあるのは、いつか味わった記憶のある乾いた期待感。
レコード会社の移籍と、時間と時代が追いついた先。
現代におけるこの世界の住人も、随分と異質は見られなくなった。

最前列での景色を眺めながら。
ぶらさがるもたれるバーの滑らない感情。

あっという間に帝国が推参。
時間は定刻。

スネアの合図とベースの静かなゆらめきから。

ギターを背負わず、歌いだす昭和。
場末のスナックのママにも似た大きな髪の毛の塊を、
ゆらゆらさせながら男は静かに歌い出した。
静かに動かす歩みは加速することなく、その時速を保ちながら動く。
絞り出す声の隙間に低い音、乾いた音。

節足動物の歩みにも似た。
そんな時間の中で、ベース音が狩りを始める。
弦の長さと同じ髪の毛を静かに蠕動させながら。
押さえる弦は静かな芋虫。
弾く指は、かまきりの食欲にも似た運動の中。

ギターが混じり合う。
初めて楽しむ最前。
決して男前ではないが、美しいのである。
単純に。
その姿につたう汗と真っ赤なズボンのヒップラインだとか。
喪服美人と出くわした何か妖艶な。
猥雑な感情をつかんではいけないのに、なぜか浮かぶのは艶めかしさだったり。

ベースが浮き沈みしながら、ギターは加速を始め。
ついには、腰がギターを弾ませながら曲は次から次へと世界を回る。

とにかく言葉の形容がたい。

「空洞です」の曲たちの反復がなんとも心地よく。
背中に感じる会場、人間からの「G」
重力を感じながら、前しかない世界、後方世界の空気を感じる。

少しずつ、少しずつ詰め寄る距離の中。
ちらりと見えた靴の底。
adidas の文字が妙に綺麗で。
心に突き刺さった紫色の文字。
緑のソール。

ありえないぐらい長いシールドは、彼の必要行動を制限しないための自由の証明。
縦横無尽。
ギターとの会話の果て、続く宇宙の先。
少し歯がみしながら、その宇宙をつなぐ光のようなベースライン。
サングラスを外さず。
黒に包まれたベーシストは、正面出で立つことはなく。
内向的な狂気をじっくりあふれ出させながら。

結局のところ、今現在。
日本における音楽の形でもっとも完成されてるバンドとしては、
ゆらゆら帝国を列挙する。
媚びず曲げず、真ん中空洞の中。
液体も気体も、粘体でも何でも通せてしまう柔軟さを持ちながら
加速の前の序奏が助走となり、必要以上のアピールもせず、世界をねじ曲げる。

アルバムの秀逸も至極ながら。
近年。
あまりに近くに寄りすぎたためにその世界の中毒を自ら断ったわけだが。

12月の渋谷での演奏会のチケットは用意できた。
ただそこに存在してるだけでいい音楽の存在。
それがゆらゆら帝国。

美しすぎる光景が見える。
怪しさは通り越え。
突き抜ける感覚は、結局美しく見えるものだとそう思える。

弦が世界を狂わせる。
時代と時間が狂っても。
結局そんなものを必要としない世界であるならば、その世界には時間も時代も必要はない。

趣味趣向の問題じゃなくて。
この音楽を美しいとそう感じれる自分の感性が。
1つ美しいという言葉の定義を変える。

光るライト。
にじむ赤と緑。
香しきゆらゆら帝国。


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江東イズル

roostersさま、こんばんは!
ゆらゆらのアノ髪の長いひとなら、武蔵野に住んでいたとき
毎日すれちがいましたよ。サインでももらっときゃよかったかな?

あ、お引越ししましたので、これからもどうぞよろしくお願いします(↓)
http://kaizokuradio.blog38.fc2.com/
海賊(改)になりますので、以後お見知りおきを。
by 江東イズル (2007-11-15 00:06) 

ごぶさたさんです☆

今出てる「FLOOR-net」という音楽誌の表紙を飾ってたのを見て
誰も彼等を放っとかないよね、とも
そして誰もが彼等に追いついたのかな、とも思いました。
ジャンルの壁を壊した素晴らしい楽団だね。
by (2007-11-15 00:33) 

ぷさん

今日たまたまゆらゆらの前に出たベストを買ってきてさっき聴いていたところでした。
何度も聴いているうちに居心地が良くなってきたよ。
グレープフルーツちょうだい。
by ぷさん (2007-11-15 00:52) 

ルースターズ

>江東イズル様
お引越しお疲れ様っす!
ブックマークしときゃっす♪

サインどころか近寄りたくない(苦笑
by ルースターズ (2007-11-16 15:58) 

ルースターズ

>Lo-Fi 様
これで飯を食える時代にと(笑)

彼ら以上に。
この世界のゆるやかな流れを褒めたいものです。
しかしながら売り上げが増えても彼らの世界は、
未だ遠く先。
姿がぼんやりとだけ。

12月忘年会しましょ(笑
by ルースターズ (2007-11-16 16:03) 

ルースターズ

>ぶさん
誕生日プレゼントをあげちゃう。
by ルースターズ (2007-11-16 16:04) 

satoka720828

今晩は、お邪魔しますね。「ただそこに存在しているだけでいい音楽の存在」って言い回し・・・美しいですね。実際貴方から観て、そのような存在なのですね。貴方の言葉は、時空を漂います。お邪魔しました。
by satoka720828 (2007-11-18 23:40) 

ルースターズ

>さとか様
そうですね。
その場にいるのが、生を受けた瞬間から決まってたんだと。
そう思えるバンドです。

唯一無二。
生半可な気持ちで聞く輩の気持ちはわからない。
by ルースターズ (2007-11-19 18:33) 

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