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BROKEN FLOWERS 【監督:ジム・ジャームッシュ】 [君にMOVIEを!]

妻が借りてきたDVD。
「中秋の名月」なぞ、気にも留めず眺める。
1人暗い部屋で酒も飲まず。
ソファーに寝転がり。
氷をガリガリ食うような男に、風情だとか情愛など掴めるわけもなし。

ブロークン・フラワーズ 【監督:ジム・ジャームッシュ】

ただ単純に「男」として。
少しばかり「どこにでもありそうな匂い」を感じてしまいました。
ビル・マーレイのあの空気。
度々の女性に対して使い分ける色香というものが、フィルムからほのかに香ってくる。
贈る花が都度違うだとか、そんな些細なことでも敏感に勝手に想像してしまう。
そんな演技の中に「ドン・ジョンストン」の過去の生き方がある。
あんなにフレッドペリーが似合う大人もいない。

人生歩む中で、色んな場面でいつもとは違う自分を演じ、
演じているうちに、その自分になってしまう。
そんな経験の無い男はいないはず。
恋をすれば、何も異性に限らず。
人を好きになれば。

好きな女の子に対して、嘘ではないのだが。
見栄にも似た嘘をつき、その娘の気を引くような。
そんな少しずつの嘘が、いつしか今の自分の礎になってたりする。
騙すつもりなぞ、無いけれど。
そんな虚飾の自分を好いてくれるならば、喜んでそうなってしまうような恋があるでしょう。

少し話は逸れますが。
多くの野郎たちが「そうだ!」とは言いませんが、
多くの。少なくても僕の周りにいる男どもは、
「以前付き合った女性は、未だに自分に好意がある」
と、大いなる勘違いをしております。
かという私もおそらく潜在的な確信犯です。
10年も昔の、いやそれよりも前の恋だとしても。

「昔の彼女に逢えるけど、どうする?」
と言われたらどうしますか?
僕はきっと逢います!と言うでしょう。

でもきっと逢っても、昔のあの娘は「?!」ではなく「??」なんだろうなと
容易に想像できた挙句。
「何しにきたの?」と微笑んでいってくれる人ばかりでは無いだろうし。
そんな淡い期待なんて、コーヒーフィルターにも残っていやしないのですが。

それでも、どんな人生になったのかな?だなんて上から目線で
愛した人の僕の知らない人生の先に、現在に興味を抱いてしまいます。

SEXをしただとかじゃなくて。
キスをしただとかじゃなくて。
ただ好きだったあの娘がどうなったのかという、恋の結末を見たいような心地です。

「もういい!見たくない!逢いたくない!!」と言っても一握の興味はあるはず。
だなんて、そんなことを考える隙間があるくらい、時間に緩みもある映画。
そして、結局は足を向けるドンの「男的当たり前」。

息子を。
息子の母親を探す旅。
いやそれすらでもない命題の中の迷走。ロードムービー。

女性にも流れる平等な時間軸。
そうですよね。
僕だって好きだった娘がいつまでも、10代や20代な訳じゃない。
同じくらい年齢を重ねてるわけだから。
そんな昔の恋のことを珍しくぼんやり考えてしまいました。

ロウソクの灯りが消えるような。
そんなラストを見送って、「どこ」と「どこ」を繋げて。
「どこ」と「どこ」とを切り離して。
そして、「どこ」と「どこ」に確信を持ち、ハリボテを捨てる。

自分なりの解釈の中で、自分なりの確信が生える。
そこを摘み取って、飲み込めば。
ジムジャームッシュの本質に迫らずとも、遠からず近からず。
映画の意味がわかる。

実に、聡明でわかりやすかった問題が、ラストで「まやかしの迷宮」にと落ちるわけだが。
それは、実は迷宮ではなく。
結局、理解しているものへの答えであり、疑問だったりもする。

ありきたりなハリウッドの作品ならば、誰が見てもわかりやすい物語の結びだろうけど、
そうはいかない。
答えなんて簡単に無い方がいい。

むしろ、少し自分の中で整理して、サイドストーリーを感じれるくらいがいい。
スピンオフのような。

座頭市ばかり見ていたから。
考えてコラージュ出来る映画。
ただ黙っても物語を感じれる夜から、
朝食の香るコーヒーを流し込み、清清しい朝と憂鬱な1日の始まりのような。

湯船に浸かり、電気を落とし。
少し整理をしながら考える。

僕の手元には、1冊の本があって。
それがまた、この映画から遠く続く(東京の)恋というありきたりな話を。
そして自分にあった花の時間を、今束ねる・・・・・・・。


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コメント 4

ソヒア

あ、この映画だったのね?(苦笑)


>「以前付き合った女性は、未だに自分に好意がある」

いいと思うよ、この考え方。
でもね、だぶん、あんまり当たっていないかも?
いまだに好きか嫌いかはどうでもよく、
でも、ずっと大事な人であることは間違いない、私の場合。
ま、人それぞれですがね。
by ソヒア (2007-09-28 12:08) 

ルースターズ

>ソヒア様
この映画です♪(笑

「あんまり当たってない」じゃなくて、120%当たってないんです(笑
知ってて「好きなんじゃね?」と想うのだから、馬鹿なのです(笑

僕もそう想いますよ。
男の子が、性格や価値観を変えるような出来事って、キッカケって。
結局好きな女の子に傍にいて欲しいと思うときしか、
おおよそは、生まれないと想ってます。

今の僕は、きっと付き合ってきた女の子や今のかみさんの、
エッセンスが多分にあると想います(笑
それで出来てます。きっと僕。
by ルースターズ (2007-09-29 21:11) 

kurohani

この映画大好きです!女優陣がそれぞれ良い演技してて本当に良いですね(笑)ビル・マーレーのダメっぷりも可愛いです。
by kurohani (2007-10-05 22:15) 

ルースターズ

>kurohani様
あの空気が溜まらないですよね・・・・。
本当に綺麗な映画で。
それが溜まらなく愛しいです。
あのダメップリも(笑
by ルースターズ (2007-10-10 19:13) 

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