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「血と骨」 崔 洋一監督 [君にMOVIEを!]

「ゆれる」がきっと頭を使うだろうから、
もう1本は、何も考えずただただ圧倒的な空気に呑まれようと。

寺島進か、浅野忠信か、北野武でふらふらしてたら、旧作に「血と骨」を見つけ。
これにしようと意を決する。

「血と骨」 崔 洋一監督

予告編の印象と違い、猛烈な暴力や強烈なインパクトというよりは、
北野武演じる金俊平「怪物」の人生紀になるわけですが。

取り巻く家族の翻弄の方が、ドラマティックであの短時間で描写しきれるのが
また圧巻だとそう感じる。
最初からのキャストを最後まで丁寧に回しながら。
あの人は何処に行ったんだろう?とかの余地なく丁寧なつくり。

しかしながら、あれだけ暴力を尽くしても、人を殺めないギリギリの生殺し。
(実際は、殺めるわけだが・・・・)

もう少し猛烈でも良かったのではないかと。
思想の読みきれない怪物の動向に、突然出てくる特撮の怪獣のような空気すら感じる。
「息子」にこだわり、その「息子」をカネのように自分の言う通りに動かし、
それでいて、自分の体の一部のように扱いたかった男の末路もまた、一貫したもので。

そこには、妻だとか、娘だとか。
女性を人間として見ず、意に帰さない狂気というよりは、自己中心的な世界観の翻弄。

高利貸しのシーンもあまり多くの人間を介入させず、物語は進み。
非常に良く出来た物語の展開に思う。

時代背景もここしかないだろうという、ピンポイント。
暴力とセックスの板ばさみだが、
欲する欲望もまた「血と骨」たる息子を探すものだけ。
正雄(長男)には、「だから女が育てると・・・・」と言ったニュアンスで一蹴。

ただ、もう少しの憎悪ともう少しの圧迫感が欲しかった。
それは北野武の強烈が、度を越してなく、既存なものを演じてるように見えた。
笑顔で人を撃つような狂気なキタノブルーの持ち主が他人の映画で
泳ぐ感覚にあるんだろうな。

こう考えると、北野武は、北野武が輝く最高の瞬間を知ってるからこそ、
自らの映画で自らを使い、猛々しくそして雄雄しく美しく魅せることが出来るんだろうけど。
ただ、北野武以上に、金俊平を演じれる男はいない。

映像の中に、ただ北野武が座ってるだけで、たぎる虎を見ている気分。
銃器が存在しなかった分、その拳に感じる狂気は充分に感じれる。

笑顔は1つもない。
笑わない男の物語。


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山田虫

今、梁石日の原作の方を読んでるところです。
上巻のまだ最初の方なのに、もう二人も死んでるし(笑)。

男ワールド炸裂ですね。
女子の出る幕なし、です。
by 山田虫 (2007-05-17 16:42) 

ルースターズ

>山田虫様
(笑)
一貫性があるのか、まとまりがないのか。
それでいても、突き抜けた感があるのは、いいことです。

基本、人生一生分を映画に詰めるのは好きじゃないんですけれど、
それでもこれでいいなぁと思うのは、
フィルムになってない時間ですらも、
傍若無人な感が想像できるからですかね(笑
by ルースターズ (2007-05-20 16:36) 

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