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平成18年6月17日(土) [INFOMATION]

小雨が少し降る東京。
降水確率の数字を完全に的中させた朝8時。

喪服を丁寧にバッグに仕舞い込み、スクーターで桐ヶ谷へ向かう。
東京で桐ヶ谷と言えば、有名な斎場なようなのですが、僕は知らなかったのです。

駐車場の程近く、僕が就職して、本当にお世話になった先輩のお母様の写真が見えた。
たくさんの花に囲まれた写真は、先日最初で最後の先輩のお母様の対面した顔より、
とっても美人で、ステキな写真だった。

綺麗な写真の下に、まだ綺麗な顔をして眠った先輩のお母様の顔があった。
詳しくはとっても書けないけど、「急逝」というもので。
突然の生涯は、68歳という時間を最期に止まってしまった。
気丈な先輩も、時々の涙を隠さなかった。

香典を渡し、焼香もせず。
僕は9時半で桐ヶ谷を後にした。

この日、先輩のお母さんの弔いと同じ時間に義祖父の法要が待っていて。
人生で1度あるかないかの、ありがたくないハシゴ。
葬式のハシゴ。

見送る側は、やはり礼を持って1つの法要を真摯に参列・会葬したいと願うが、初めて叶わず。

義祖父の葬式に会葬。
通夜の半分くらいの会葬参列に礼をし、淡々と段取りよくあれよあれよと、棺の蓋が閉まる。

お気に入りだと妻が話していた帽子が2つ。
棺の中に入っていた。
少しダンディズム薫る、82歳の初老が被るととても凛々しく見える形の綺麗な帽子だった。
式場を彩った花は、あっというまに義祖父の体を鮮やかにに彩り。
帽子の形も菊で隠れてしまうのと同じく、今にも話してくれそうな顔も花で埋まり、
直視は出来なかった。

妻はとても義祖父が好きで。
事ある毎におじぃちゃんの話題だった。
着物を粋に纏い。
おじぃちゃんの井手達は、慶応の剣道部出身といういかにも無骨な経歴と、
見事に重なり、優しい顔というよりは精悍な顔つきだった。
おじぃちゃんと出かけることが愉しみだった妻には、病気で細る祖父を見続けるのは
正直しんどかったことだと思う。
義祖母に手習う茶道の稽古で、祖父と顔を合わせる事も、堪らなく楽しそうだった。
僕はあまり面識もなく、本当に数度お会いするくらいで。

ただ、普通のじぃさんじゃないことくらい、瞬間でわかる様相と姿だった。

半年前の結婚式、本当ならつまらない結婚の誓いの挨拶みたいな。
ただ文章を棒読みするだけのセレモニーも「義祖父の挨拶」とプログラムを替え。
面白挨拶で笑いを誘う、ワンマンショーであったことは言うまでも無い。
今では、やって良かったと心底思う時間であったと痛切に感じる。

そんな丁度半年後。
義祖父は逝ってしまった。
月命日が同じなのも、少しばかり運命としたいと。
そう感じたかった。

花で飾られ、荘厳におさまった棺の行く先は、魂と体の分離であり偶像を捨て、
写真だけが生き残る時間の誕生。
車で10分。

到着すると、すぐ目の前には重厚な扉が8つ。
次から次へと、涙で飾られた棺が、不規則に吸い込まれる。
義祖父の白い棺も例外ではなく・・・・。

扉が開くと重厚な鉄の扉が上がり。
棺は頭を垂れる時間の間に、扉の中に吸い込まれてしまった。


義祖父の棺が吸い込まれた3つ隣。
先輩のお母さんが最期の時を迎えた場所。

この日、朝より往復した弔いの場所は、同じ桐ヶ谷であり。
奇しくも、瞬間的には、義祖父と先輩のお母さんの名前を同時に見るような時間になってしまった。


ただ、弔いの場所が同じだった事で、手を合わせることが出来た事。
素直に妙な因果に、少しばかり感謝しながら・・・・・。

初めて見た、焼かれた身体と。
拾い上げる骨の重さと。
時々舞う、身体を燃やした灰。
あっという間に、白くなってしまった姿に。
あっけにとられたのは間違いじゃなく。

死んだ後の姿は、無機質で。
何か得たいの知れないものをかき集めるような簡素な動作をただ眼で追うことしか出来ず。

至極スンナリ納まってしまった骨壷の重さと。
生きてきた全てを司った肉体の重さのギャップに言葉も出ず。

死後。骨とか。写真とか。墓とか。そういうのじゃなくて。
いつまでも義祖父の話ができるようでありたい。

義祖父・義祖母が大好きだった銀座のライオンに、妻と4人でBEERを交わすことは
出来なかったけど。義祖母と妻と一緒に足を運びたいと思う。

3人だけど、4人席で。そして当然、こう頼むのです。

「BEERを4つ」と。

いつかの17日に。


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コメント 4

shuri

20年も前。大好きな粋な江戸っ子の祖父が亡くなった時。
最後に納めた仏様が。。。とても記憶に残ってる。
その形と色の素晴らしさは、驚きだったのよ。
祖父が隠していた、とっても特別な宝物を見たような思いで。。。

今の都会の斎場は、なんだか工場みたいで。ちょっと戸惑う。
ゆっくり静かにお別れをするゆとりもなくて、淋しいね。。。

人の死は宿命。それがいつかは運命。。。
そんなことを言ったのは誰だったか。。。
by shuri (2006-06-23 00:05) 

ぶらんこ乗り

お久しぶりでした。ブログにも来てくれてありがとね。訃報が続いて大変でしたね。ゆっくりと心を整えてください。故人の姿をいつまでも思い出していくことが供養だと思う、そしてその素敵な人たちの血があったからこそ君は存在するのだよ。と子どもに伝えられる親になれたらいいね。
by ぶらんこ乗り (2006-06-23 06:18) 

ルースターズ

>エビ姐
死ぬつーのは当たり前なのにね。
当たり前が受け入れられないから、ツライんだね。
当たり前に生きてるけど。
麻痺してるんだな。当たり前にきっと。

死ぬために生きてるからね。
精一杯死んでやらねぇーと(笑)
by ルースターズ (2006-06-23 22:47) 

ルースターズ

>ぶらんこ乗り様
お久しぶりです。僕もあんま顔ださなくて申し訳ないです。
んまぁー。それで凹むわけじゃないんですがね。
やっぱり、逝くというのは続いて欲しくないっすね。
得てして、続くんだけど(苦笑)
by ルースターズ (2006-06-23 22:50) 

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