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木村カエラ 「BEAT」 [君にREALを!(音楽編)]

ドラマ出演は、必要ない。

メディアは戦略を進めながら、時に世間が欲する「ポップスター」は1輪の花として、
その存在を広い草原の中で主張し、声高らかに歌う。

「木村カエラ」

作られた彼女の存在と場所との軋轢か。
会社が金を生むための流れに任せ、若い頃にしか出来ないからと言ってしまいそうな。
そんな若い匂いと勢いをモロに感じる女性。

飽きられて。
捨てられて。
多くの戦友の波に呑まれて。
「そういや、いたよねぇー」何つー言葉で片付けられてしまいそうなあやふやな存在への始末。

そんな彼女は、切望から生まれ、飛び出したのはなく、
雑誌~テレビ~音楽と戦略にも似た緻密な作戦の中で、彼女は生まれた。

奥田民生・堀江博久・アイゴン・クハラカズユキ・田淵ひさ子・高桑圭・mito・吉村秀樹・岸田繁
などなど匂いの強くアクが強いメンツが担ぐ神輿。

数々のアンダーグランドにいる猛者が、木村カエラを担いだのは、それもまた面白半分な
感覚もあったのもしれないし、ひまつぶしだったかもしれないし、それすらも戦略だったのかも
しれない。

「BEAT」というこの類の中では、ズバ抜けたナンバーを携えながら、
民生は、PUFFYの時とは違い、常に彼女の傍らには存在せず、
あやふやな出航は、大海原に出て行くには、ビジョンが見えにくい。

どこに行きたいのか。
どうしたいのか。
はっきりした輪郭は見えないけれど、それでも曲はブラウン管や電波に乗って、
今日も誰かの耳に届く。

NANAトリビュート、LAST DAYSトリビュート。

何がしたいか全く見えない道筋を感じながら、この2ndにまとまりがある理由がよくわからない。
音楽を愉しんでいる感覚なのかもしれないし、進みたい場所を多くのパイオニアが見せ付けてくれるお陰で、彼女自身もどこに行くべきか理解してきている感覚もあるのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。

にしても何度聴いても、この「BEAT」の名曲感は否めない。
奥田民生の遊びが完全に入り組んでいる。
低音だとか高音だとか、本人の持ち味以上のそんなもんじゃない理由の全て。

民生の凄いところは、なんとなく割り切りながらも自分のカラーを消さないことで、
自分色にも相手色にも染め直すことが自由なところ。

PUFFYからの時間、誰が歌っても民生色が残るから、それをぶっ壊すような存在感でないと、
民生の色は消えない。
それを承知で立ち向かうわけで、それもまた冒険。
乗りこなすのは、デカ過ぎるエンジン。

民生の進化に脱帽とニューヒロインの底力を見ていたい。

あと10年。
可愛いとかスタイルとかそんなもんじゃ評価されない時間が来た時、この人はどこにいるんだろう。

案外何も望まず、何も求めず、その場を精一杯ブチ壊して渡りきる、
そんな女性の匂いを振りまきながら、10年後も「BEAT」を歌うならば。
それが聴けるのならば、僕は木村カエラを見たいと思う。

今の木村カエラじゃなくて、色んな担ぎ手がカエラという名の神輿を下ろし、
彼女が自分で歩くときが来たら、彼女はどういう声を世界に広げるのだろう。
自分の意思と血の通った音楽を、どういう形で。

10年後。
「そういや、いたよね」
ってそんな言葉で作られたアイドルにも似たポップスターの、10年後の眼光を見てみたい。

10年前から現在。
彼女のような目つきをしていた歌い手は、オリコンなんて呼ばれる日本の指標から消え、
自分の生き方として音楽を選んだ女性が多い。

小泉今日子が渡りきった道とは違う、作られたものからの脱却。

下降なき自分の上昇。
生まれてくる揺ぎ無き自我。
そういう全てのものは、注ぐ全てに宿る。
そうやって脱皮を繰り返した女性は、とても美しい。

消費される事を拒まれるような、そんな声が聞こえてきたら。
偶像を愛する間抜けな観客の声が途切れたら。
偶然に、手に入れたこの音源を捨てて。
彼女のその瞬間をお金を出して、手にしたいと思うのです。

しかしながら、この「CIRCLE」。
この手のPOPアルバムの中では、久しぶりに強烈なもんです。
自分の当時の色を完全に創り上げた椎名林檎の「無罪モラトリアム」の登場には劣りますが、
それに近いものかもしれないなと感じてしまうのもまた事実。

2ndでこの質。
3rdで落とす事は、許されない。


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コメント 6

木村カエラは今までの消えていった女性歌手にならないように、周りが大事にしているように見えるが、逆にそれが彼女の行く手を阻んでいるような、そんな気がしていました。

民生の強力な楽曲と言う武器を手に、このまま進んでいってほしいですね。

担ぎ手がいなくなった方がかえって彼女は強くなりそうだけど、今までそう見えて
自身の足でしっかり立って歩く事が出来た女性歌手はいないから、やっぱり厳しいかもしれませんね。林檎しかり。
by (2006-06-20 15:38) 

ルースターズ

>100㏄様
むぅ。その通り。大事にしてます感はヒシヒシきますね。
あたしはさぁー!みたいな感じを強くしてねぇ。
テレビのコメンテター。
「オシャレでカッコイイ。最先端」

歌うんならそんなもんは必要ねぇーわなー。と想いながらイライラしてニュースを
消しました。
目標はちあきなおみ。あんな感じで(笑
by ルースターズ (2006-06-21 11:52) 

junper

こんばんは。ご無沙汰コメントです。あと僕のブログの方にもコメント頂き、ありがとうございます。
木村カエラはいろいろ記事にさせてもらってるので、興味深く読みました。彼女のライブには何度か足を運んでいるのですが、いろんなミュージシャンが彼女を担ぎ上げる一つの要素は彼女のいまどきあまりないようなストレートな歌声にあるように思います。ま、これは記事のテーマとはあまり関係ありません。
あと、この記事で興味深かったのは10年後、のくだり。僕の視点は「今」だったので、これにははっとさせられました。
確かに今の彼女はメディアによって作り上げられた虚像たる部分と妙に漂うサブカル臭との、絶妙かつあやういバランスの上に成り立っている気がしてなりません。がこういう存在がなかなか出てくるものではないので、期待してしまう所もありますね。
by junper (2006-07-06 00:45) 

ルースターズ

>junper様
そうなんです。
きっちり泳ぎきれるのか?!と思う反面久しぶりに出てきたというか、
僕の場合結構SAKUSAKU見てたから。

売れても「カエラちゃん」だった時間が長くて、聴く気にもならん!みたいな
感じで(笑)
たまたまアルバムを聴く機会があって、聴いてたら嫁に「なんかあったの?」
と心配されたくらいです(笑)

サブカルの側面もまた傀儡で。
ただ、今聴いてもいい声の感じだなと思う曲はあったりします。
ただ、これもまた彼女の本質とも少し違うのかなとも思ったりします。

飽きたりと飽きられたりとかいう次元でなくて、もっともっとアングラ帝国の
女王になるくらいが具合が良さそうな気もします(笑)

危うさを強みにしてしまうか、消えるか。
いずれにせよ、この類では久しぶりの逸材感は僕も否めないです(笑
by ルースターズ (2006-07-06 00:56) 

hanauta-tsuredure

こんばんは。私のblogへのコメント有難うございます。
もはや本文にて、私が述べたいこと以上のことを語っておられるので、浅学な私なぞがここでコメントするのは憚られますので、nice!だけ残しておきます・・・

今後も遊びに立ち寄りますm(__)m
by hanauta-tsuredure (2006-08-30 00:43) 

ルースターズ

>たやの様
いえいえ、面白い記事が多くて、楽しく拝見させていただきました♪
こちらこそ、今後も遊んでくださいなー!
by ルースターズ (2006-08-30 12:42) 

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