2010.07.07 家族の風景

『Barley tea』


『One　hand』


『satisfied』

2010.06.07 家族の風景

@TAMA　ZOO


『Snow leopard』


『Like a Giraffe』

2009.09.02 05：06

この世界に繋がる唯一の道「子宮口」

広がらない道の険しさ苦難の２７時間。
陣痛室の隣の女性の、絶叫と悶絶を繰り返す様が、室内に響き渡り。

その道を辿る子どもの険しさ同様に。
その道を築く女性の苦悶の険しさが、私達にも現実味を帯びながら。

ベッドに横たわる妻の等間隔の逼迫に何も出来ず。
室内には、せめてもとの「JACK JOHNSON」が静かに漂う。
初めて見る妻の繰り返す嘔吐。

その長く避けられない茨の道に向かう妻に。
戦地に送る肉親にも似た、不安と焦燥の中で。

ただ、そこに宿る命の身体的磐石を望みながら。
また妻の立ち向かう気持ちや身体を想いながら。
結局、人間のオスは何も出来ない哺乳類なのです。

深夜３時手前。
横で寝てしまったボクに気遣ったのか。
静かに「行ってくる」と小声で行った妻を見送る。

ボクはトイレに立ったのかと勘違いしてしまって、また眠気に混じる。

破水もしていたので、トイレの時間はかかるが。
あまりにも遅いので廊下に出ると。
そこには分娩室の赤いサインが、深夜の廊下に煌々と。

「行ってくる」は、「分娩室へ」ということに気付くこの体たらく。

程なく、分娩室に招かれ。
そこは、瞬間を待ち焦がれるなどという余裕の無い空気。
等間隔だった陣痛は、時間をかけながらゆっくりと短くなって、
３分間隔にその波を変化させていた。

３分間隔で襲う大波に、必死で立ち向かう妻の姿と。
骨盤に阻まれ、順調な道が用意されなかった娘の攻防の時間だけがあった。

波を越える度に訪れる妻の腰の激痛に、腰をさする手もおぼつかないボクの無能さ。
腰痛が治まると、インターバルを挟んで再び波が来る。

波を待つ妻は、終わりの見えない終着点を問いつつ。
著しく縮まらなかった陣痛の３分のインターバルに感謝を口にした。

「休みが長いから、頑張れる」

しかしながら、分娩で苦しむ時間は通常の倍になる。
にも関わらず、笑った妻の。女性の精神力には、頭が下がる。

「お日様と競争ね」と話した助産師から、終着点を嗅ぎ付けたボクらではあったが。
開いた２本の足の間の景色は、ボクらからは見えず。
怪しい憶測に疑問符。

その発言から４０分経過し、５時を指した頃。
スリガラスから見える景色の色が、赤みを帯びて。
ぼんやりとした９月の朝焼けを感じることが出来ていた刹那に。

娘・凛々子は、狭く細い道を通った証明に、頭がコーンヘッドになりながら。
この世界にやってきました。

2009.09.02　05：06　3346ｇ　51.8cm

ボクらは、瞬間顔を見合わせ、「あ！出た」と口にしただけで。
ボクは泣くこともなく、また猛烈に感動することもなく。
ただただ呆気にとられただけで。
酸素を吸い込み、呼吸との衝突の中に混じる泣き声が。
分娩室に響く時でさえ。
笑ってしまうぐらいに、無事終えたその安堵に浸っていたのだと思います。

娘が無事に産まれたということで。
一度も病気をせず。
出産１ヶ月前まで、仕事をこなし。
また家事もそこそこに。

子宮にいる時間は、親が全ての責任を担い、子の身体を用意する時間。
子供には不可抗力な時間。
その妊娠の時間を、健康に守りぬいた妻に感謝しかありません。

子宮から出たら、それは娘の人生です。

娘の人生、妻の人生、そしてボクの人生が重なってるのが家族であるのだと
そう想います。

重なる以上は、重なる時間の分だけ楽しんでいきたいとそう想います。



親の価値観に縛られず。
ボクら夫婦の多くの友達の愛と戯れの中で育まれながら。
ボクらが想う以上の素敵な人生を切り拓けますように。




【追記】
皆様から沢山のお祝いの言葉。
往復書簡にせず、返信は致しません。
ありがたく、またメッセージを嬉しく思い受け取らせて頂きます。
本当にありがとうございます。