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大きく揺れて、響く横浜の昼下がり。 [君に広島東洋カープを!!]

NEWSになんかならない。
横浜の昼下がり。
打球を避ける高いネットは取り払われ、まるでアメリカの匂いがする。
そんな球場に変わっていた。

野村謙二郎、39回目の誕生日。
スタジアムに来ている「C」を愛するもの。
赤を身に纏うものは、今日の意味を知っている。
二度と背番号「7」を、現役で見ることが出来ない。
そんな彼の誕生日。

祝日。
スタジアムは、多くのファンで埋まっていた。
「赤く染まる・・・・・」
そこまでの光景は広がってはいなかったが、
心地良いデーゲームは、優しい陽の光と空気が漂っていた。

「ゲームは?」というと、相変わらず大竹が一人で序盤完全にぶち壊した。
1回1/3 四球4。失点7。
広げた傷口をふさぐ事が出来る投手陣ならば、今ごろ最下位なんかにはいないだろう。
ずるずるとブチ壊したゲーム。
2回で、10失点。

いつもなら勝敗を気にし、前田の打球の行方を気にするが、今日の本当の意味は勝敗じゃない。
勝つことが出来れば良いが、勝たなくても良いんじゃないかな?なんて
そんなことが普通に思えて、負けることに言い訳が必要の無いゲーム。
そういう野球は、おそらく初めてだと思う。

スターティングオーダーには、「7」は無く、若手の台頭著しい。
見せ所は多くあったが、いかんせ序盤大竹がブチ壊したゲームを修復できるほどの、
力は無かった・・・。

そして、誰もが待ち焦がれた時間やってくる。

9回表。

9回カープの攻撃が始まる前に、野村の応援歌が流れた。
誰もが声を出し、スタジアムで野村の登場を皆が待っているんだと、
いわんばかりの高鳴るトランペットと多くのファンの声は皆、笑顔だった。

そして、1つ2つアウトが重なり、その瞬間がやってくる。

ネクストバッターサークルに現れただけで、球場全体から歓声が起こる。
待ち続けた時間。
内野に座る人間は、我先にバットを振る背番号「7」の姿を目に焼き付けようと、
腰が浮く。
当然俺もそんな一人。
末永の打席は、ヒットを望むものではなく、「早く次の時間が欲しい」渇望の時間でしかなかった。

アナウンスが球場に鳴り響くと、ベイスターズのファンもメガホンを鳴らし、
拍手を贈った。
間髪いれず鳴る「HAPPY BIRTHDAY」
球場が、歌うんだよ。
凄い光景だった。
2000本の偉業を成し、今シーズンでユニフォームを脱ぐ男の誕生日。

男はいつもと変わらず左バッターボックスに立つ。
そして、スタンドもいつもと変わらない応援を始める。

いつもと違うこと、
球場全体からメガホンの音が響く。
前も後ろも、レフトスタンドもライトスタンドも関係なく。
メガホンの音、ヒットを呼ぶ声は敵も味方も無く響く。
球場が笑っているように、スタジアムのどこにもこの瞬間を無視する人なんかいない。

正直言ってあんな光景初めて見た。
内野席も外野席も無い。
たったこの男の1打席に、その場にいる全員が素直に彼の偉業と彼の現役生活に
拍手と賛辞を送っていたし、大きなうねりだった・・・。
スクワットの波は、球場全体に巻き起こり。

彼の打球は、センター前へ抜けていった。
彼は、1塁キャンバスで、最初に横浜ファンに頭を下げた。
そして、カープファンに。

試合が終わるには時間はかからず、ベンチに戻る「7」は、カープファンの待つ
内野と外野に頭を下げた。

頭を下げるのは、僕らのほうだ。
こんな体験した事も無い時間と場所を与えてくれた野村謙二郎に、
頭を下げなくてはいけないのは、僕らの方だ。

野村謙二郎。
彼が築いた足跡は、これからも続く。
2009年更なる歓喜に向けて。

ニュースにもならないこの1打席。
この感動を、知るのは昨日あのスタジアムにいた人間たちだけ。
それだけで充分だと思う。
僕にとって、本当に感慨深く、そして忘れがたく。

=追記=
横浜ベイスターズHPより

9月20日発信
9月19日(月)の試合後、広島東洋カープ・野村謙二郎選手からメッセージが届きました。

「ベイスターズファンのみなさまへ。
9月19日の試合で打席に入ったとき、『野村コール』をしていただき、ありがとうございました。
一塁側のベイスターズファンのみなさんからも応援してもらい、感謝しています。
まるで、ホームグランドにいるような気持ちでプレーすることができました。」

忘れがたいのは、謙二郎本人も同じだったようで・・・・(涙)


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コメント 12

tetsu

こんばんは。
ベイファンたちもスクワットするのではという噂はありましたが、実現したようですね。スポーツニュースでしか、それもほんの少ししか見れなかったのが残念でなりません。改めて、野村選手ってすごい選手なんだなぁと思いました。
by tetsu (2005-09-20 21:52) 

ルースターズ

>tetsu様
本当に素敵でしたよ・・・。
球場が本当にざわめきたち、目の前のライトスタンドも、
CARPと変わらない応援でしたから。

佐伯が引退するときなら、僕もしこたま応援するなぁ(笑
by ルースターズ (2005-09-21 07:24) 

momosuga

読みながら鳥肌が立ち、目頭が熱くなりました。
by momosuga (2005-09-21 20:07) 

ルースターズ

>モモスガ様
僕、たくさんCARPを見に行ってます。
でも特別な日だったと今、懐古しても思います。

僕、野村から眼をそらせなくて、でも目を反らすと、みんな見てるんです。
誰も目をそらさないんです。
バッターボックスの謙二郎から。
拍手・メガホン。
佐々木のあの試合が茶番に見えましたよ。

引き際の美学なんでしょうね。
2000本打ったから、やめるなんて言われたくないと言ってた謙二郎の
決断は、みんなそんなこと思ったりしない。
彼のカープへの想いも、丸ごと感じた。
そんな人でした。

しばらくすれば、2000本記念のユニフォームが我が家にくるはず(笑
by ルースターズ (2005-09-23 09:25) 

AKI

おはようございます!
野村選手の律儀な対応に『nice!』です。
ベイファンの青と黄色メガホンでのスクワットも良かったですね。
相手チームのファンからも愛されていた選手が
現場から去ってしまうのが、もったいないですね。
もし、私がスタジアムにいたら号泣していたかも。
by AKI (2005-09-23 09:55) 

ルースターズ

>AKI様
嬉しかったんでしょうね。やっぱり。
チームのファンに愛されるのは当たり前だけど、
関東のチームから惜別の想いを受けると、やっぱりグッときますよね。

あの日、ベイのファンは赤く「7」と書かれたボードを持ってる人もいた。
僕は凄く、素敵な光景だと思いました。
by ルースターズ (2005-09-24 20:01) 

kumakoi

うーん。早く知ってたら絶対見に行ったのに。
本当に心のこもった記事で不覚にも涙ぐんでしまいました。
野村は永久欠番を断った件でも僕らファンに”らしいな”と思わせてくれてるけど、ベイのHPにまでコメント残しているとは!
早く新球場&野村新監督を!
by kumakoi (2005-09-25 09:29) 

ルースターズ

>熊鯉様
本当に温かい光景でした。
たった1打席の感動って、色んな形があるんすよね。
そう思いました。

以前、新井の逆転3ランを見た時も、こみ上げる歓喜でしたが、
前田のHRもそう。
そういうのとは、違う。
そんな空気でした。
「7」はいつまでも、誰かを待ち続けるでしょう。
いつか、また誰かが2000本の偉業を成すとき、その選手の背番号が「7」
でありますように・・・・。

そして、2000本は「7」そんな伝説を永遠に・・・。
by ルースターズ (2005-09-25 10:19) 

azlight

野村選手、幹栄選手、澤崎選手、松本選手達の引退試合(涙)。
真っ赤な市民球場すごかったですね!!行きたかったです!!!
高校生ドラ1鈴木君がショートに来たら将来的に「7」をつけてほしいなぁと
思ってしまいます。躍動感のある選手に育ってほしいですね。
by azlight (2005-10-14 10:44) 

ルースターズ

>azlight様
ひとつの時代の終焉かと、これからまたさらにCARPを支えた
選手が去るとは思いますが、それでも新しい若鯉の成長に期待。
尾形もゆっくり快方に向かってるようで・・・・。
うん、来年は期待しまっす!!
by ルースターズ (2005-10-15 15:08) 

yuanyuan24

はじめまして。ベイスターズファンの yuanyuan24 です。今ごろコメントしてすみません。
自分のブログで昨年の印象に残った試合について書こうと思い立ち、まっさきにこの試合が思いついたので、その日の記事を検索していたらヒットしたのでお邪魔しました。
あの日は、事情を知らずにスタジアムに行っていたのですが、9回のあのシーンはほんとに感動的で忘れられません。私はあのときの対戦投手だった木塚のファンですが、勝負も球場の雰囲気も、「この場にいてよかった」と思えるものでした。
ベイスターズの選手でも、あのように対戦相手チームのファンにも応援されるような選手に出てきてほしいものです。
野村選手、本当にお疲れ様でした。
(トラックバックさせていただこうと思いますが、ご迷惑でしたら削除してください)
by yuanyuan24 (2006-01-07 22:20) 

ルースターズ

>yuanyuan24様
ボクが学生の頃、横浜に住んでました。
その時、ベイが優勝して、猫も杓子もベイスターズ!!みたいのが嫌で(笑)
にわかファンが増えたのがベイスターズ。

なんて球団だ!なんて思ってたんです、実は(笑)
でも、あの時の感動を忘れずに、ベイと時間を過ごしたファン。
そして、その前からずっと、ベイを愛してた人。
そういう想いというのは、単純に寛容な心を持つ人々で、
この日のことは生涯忘れないと思います。
年間10は観に行く野球の試合。
そんな中でも、別格のゲームでした。
TB感謝します。
あの日の感動を、思い出したようにここを訪れてくださったこと、
大変感謝してます。

ボクの多くの野球を知らない友人も、あの日たまたまタダ券があって、
観に来てましたが、感動してました。
野球っていいもんだぞ!なんて言ってた野村さんの、言葉の重さを
このゲームを見た人間は理解できると思います。

最高とか、素敵とかそういう次元にない野球の楽しさを感じた試合でした。
by ルースターズ (2006-01-09 10:25) 

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