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静寂と清らかなる涙雨。 [君に広島東洋カープを!!]

すべてのカープファンに聞けば、
一番欲しいのは「勝利の日」。
少なくても、ボクはそうだ。

少しでも金を出して。
時間を割いて。
その日が来るのを待ち焦がれて。
愛すべき時間を過ごすための、その足労は報われるためにある。


ボクの友達に智子というのがいる。
智子とは幾度球場に行ったか。
数えることも面倒なくらい。

辛い時間も、幸せな時間も智子と過ごしたことが多かった。
見ても見ても敗戦が続き。
広島に行っても負けて帰ってくる智子の運の無さには、
笑うことすら躊躇してしまうほどで。
神宮でついに大トンネルを脱出し、涙したことは決して笑えなかった。

こういう友達がいることが、
カープとは縁もゆかりもない関東で、カープを愛する人間にとっては、
本当にかけがえのない事である。

そんな智子の愛した緒方と尾形は、昨年でユニフォームを脱ぎ。
目的の多くを喪失した今でさえ、彼女はカープを信じて球場に足を運ぶ。

たった1人の、ボクの知る話だけれど。
そんな想いを込めて、スタジアムに来る人間もいる。

シーズンのたった1試合に。
色んなものを信じて。賭して来る人間もいる。
そこでのプレーに散漫や、粗雑は言葉に出来ない裏切りに近いものだと
個人的にはそう想う。

全力でやって打たれたのとは違う。
全力でやってこぼしてしまったものとも違う。
プロとしての、最低限の規範を逸脱したプレーが、
今のカープには多すぎる。

どのサイトを見てもカープファンは、カープに優しく。
悪く言うこともほとんど聞かない。
他の球団の選手が、記録を打ち立ててれば、必ず歓声をあげている。
ボクはカープファンは、とても紳士だと想う。

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木村拓也が逝ってしまった日。
4月7日(水)神宮球場。対ヤクルト戦。

東京は寒く。
雨が静かに細かく空から、視界を塞いでいた。

カープファンの多くはレフトスタンドを赤く染めたが。
平日のこの悪天候の観戦者数9057人。

その閑散とした球場。
最終的に9057人だが、試合開始前となればその3分の2ほど。
そのうちざっとカープファンは、3000人にも満たない。

そんな中。
試合開始の前に、木村拓也へ黙祷が捧げられた。
鳴り響くアナウンスと。
カープの選手、関係者の腕には喪章が冷たい風になびき。
降る雨の静けさの中。

あんなにも静かなスタジアムの静寂と。
痺れてつんざき、厳かなサイレンの中。

誰もがその時間を彼に捧げた。

木村の器用さは、カープのファンなら誰もが敬服する。
その守備1つ1つは、決して雑ではなく。
木村拓也の努力を知らずとも、その的確で丁寧なプレーは、
素直にそして安心してみていられるものだった。

ジャイアンツに行っても、その印象は変わらず
むしろ、その姿が誇らしかった。
サード、ファーストと定まらず混迷していたシーズンを
客席から眺めながら。

背番号「0」がいたら、もう少し柔軟に起用でき、
バリエーションを感じれた気もする。

時代はいつも変わる。
ゆえに、黄金期をさせた選手をいつまでも登用し、
若手の伸び悩みは、決してチームに良い作用を生まない。

理解しえても、「この選手よりは・・・」という現状を歯噛みするファンは
確かに存在する。

この日、所属したジャイアンツの奮起というか。
勝利を捧げた事実は、その選手の強い気持ちと闘志、そして感謝の詰まった試合だと
表現され、事実勝利はその理由に最も相応しいと。

ただ、遠くメジャーの黒田の残したコメントは、共感というか。
木村は、さほど騒がれるような選手ではなかったし。
グラウンドで倒れたショッキングさも相まって。
東京での報道は、猛烈に過熱していた。

野球に興味すらないような、タレントのコメントや。
知らないでしょ?と想うような人のコメントは、飾りつけのようで。
聞くに耐えないものだった。
そんな気持ちの中、黒田のコメントは、大々的なニュースを刺し貫くに相応しい言葉だった。

  悲報を受け取った黒田は「悲しみにくれても、彼が帰ってきてくれるわけじゃない。
  グラウンドで全力を尽くすことが、彼の冥福を祈ることになるのだと思う」と話していた。

  金曜日のマーリンズ戦に先発登板した黒田は、
  木村コーチのことを思いながら投球したという。
  黒田はロッカーの前で唇を噛み締めながら、
  シーズンの初勝利を亡き友人に捧げるというような、
  俗受けすることをいって、彼の死を卑小化したくないとも述べた。

  「拓也さんのために投げたとか、そのためにいいピッチングができたなどというのは、
   彼の死を軽んじることになる」

  「ユニフォームを着て、毎日グラウンドに立てる幸せを、あらためて認識した。
   それは拓也さんから学んだことだ」

人それぞれだが、東京での大々的な報道の中で、広島の選手のコメントも聞こえてこないが、
黒田がそのすべてを置いてくれた気持ちになった。

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カープの敗戦。
それも惨敗については、言葉も無い。

一瞬の輝きの無いまま、先発斉藤は四死球から自滅し。
打線が線になることどころか。
何も無いまま試合が終わった。

なけなしの1点も、パスボールからの点数と。
「好機生かせず」とあるが、どこに好機があったのか甚だ疑問だ。

ルイスもいない戦力の中、野村監督の駒不足は、正直同情しかない。

永川をストッパーからひとまず降ろしたことは、
非常に合理的だとは想うが、それ以上に中継ぎの安定感の無さに加え、
先発がゲームを作れない条理には、見ているこちらでさえ、
早々の失点に溜息が出る。

松田オーナーもゆくゆくは、カープで指導者にと望んだ木村拓也の
輝かしい未来は、もう存在しない。
捧げる勝利も、それは勝手な感情移入なのかもしれない。

試合終了後。
カープファンは、亡き木村拓也の応援歌で惜別をしたそうだ。
ボクらは、雨に濡れ続け。
かじかんだ身体を引きずりながら家路を辿った。

悔しさを通り越して、呆れもせず。
カープの恒常を憂いた。

負けたこと以上に、何か虚無感が支配したゲームで。
何も得る気持ちが無いのは、至極無念である。

信じて止まないが、どこか諦めにも似た気持ちがあるのも
間違いではないのかもしれない。

暗闇は、未だ。

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この日、ボクも喪章とその気持ちを縫いつけて試合を見た。
これから先の木村拓也がカープに植え付けるはずだった何かを、
誰かがその意志を継ぎ。
花を咲かさなくてはいけない。

少なくてもその日まで、ボクらファンはその土となり。
見上げる真っ赤な花を望みたいものだ。


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ぶっさん

愛した選手が在籍した球団だから、これからも愛し続けようと思っているんじゃないかな。もちろん、愛する選手はまだまだいるだと思うし。
それでも、今のカープは私が好きになってから、初めてっつーくらい、選手に気持ちが入っていないような気がします。
なんでなんだろ?
前田が一人奮起しても、みんなはそれに感化されるのか疑問です。
強かったカープが見たい。それだけです。










by ぶっさん (2010-04-12 18:10) 

ルースターズ

>ぶっさん
強いカープが見たいねぇ。
安心できるっつーか。

今のジャイアンツが羨ましいね。
そういう感じ。
松本・坂本。
そういうことだよね。

強いというのは、いいこと。
でも弱いから、諦めるのは子どもがすること。


by ルースターズ (2010-04-13 10:43) 

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