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是枝裕和監督 「奇跡」 [君にMOVIEを!]

11歳のボクは大人になりたかった。
大人になって色んなことを、好きなようにやりたかった。
夢も希望も、持てるだけ持って、積めるだけ積んで。
チャリンコがあれば、どこにでも行ける様な。
そんな感じで。

32歳のボクは大人を面倒くさく想ってる。
色んなもので身動きが鈍くなって、何かキラキラしたものが
剥離してる気にも。

是枝監督の「奇跡」を見た。
「JR協賛の新幹線の映画」
これだけだったら、映画の質としては全く期待できない。

kiseki1.jpg

でも是枝監督が、子どもを使って撮る映画なら。
と新宿バルト9にて。

感想から言えば、万人が同じ感覚を持てるとは思えない映画だと想う。
わかりにくさというか。
さりげないセリフの中に、感情のゆらめきが散っていて。
少し目を離すと、少しずつズレてしまうような。
気を張る、気を遣う映画。
ボクの好み(笑

是枝監督の子役の人選は、本当に素晴らしいと想う。
オーディションの素人をスクリーンにというのは、
とっても、微妙だと想うけど。
これが全員子役だと、その現場の雰囲気1つで。
子どもは役柄を越え、設定年齢相応の仕草や言葉が出る。
少し編集した感じが、余計にリアリティを生み。

完成された子役ではなく、その八分目加減が、映画に柔らかな空気を生み。
予め、決められたセリフでもなにか自然に出ているような感覚に陥る。

まえだまえだのおにぃちゃん「航基」は朝の連続テレビ小説にもしっかりと
出てたし、幹としてはいいと想う。
時々、やり過ぎ出すぎ感があっても、周りが自然なので上手く中和される。
子どもだからというのは無く、ちゃんと等身大で成り立つような映画の
空気がいい、誰も背伸びもしてないし、誰も無理をしていない。
自由で青天井。

脇を固める俳優も、それ相応の実績があるので、
こぼれ落とすことなく、映画に凜とした感じを張っている。
見ていて安心感がある、キャスティング。

単に、福岡と鹿児島の話ではなく。
福岡は福岡の話が確立されてるし、鹿児島も然り。
どちらでも映画1本いけるぐらいの贅沢さもあわせながら、
肝心な部分は削らず。
重要な伏線として残しながら、最後も安易なHAPPY ENDで結ばない。

ロードムービーの多くはHAPPY ENDで終わらないような
イメージがある。
それが凄く良くて、結局てのひらに何が残ったのか?というすべてを
明確にしない。
幾つかの部分を観客に投げて、旅は終わる。

この映画は、色んな物語の進行の中で。
最後綺麗に結ばれる感じが凄くいい。

どこも曖昧にせず、綺麗な道筋を立てる。
このお金はここから生まれる。
なんで、こうなるかとかすべてを明らかにした状態で進めるには
時間もかかるだろうに、それを無視しないのが、
是枝監督の映画の安心感だと想う。

皆が大切にしてる美徳のようなものがテーマじゃなく。
その価値観や世界を理解できなければ、皆たどり着けるおわりではない。

何も諦めず。
何も妥協せず。
大人なら、そういう言葉になってしまうものも。
子どもは違う。

子どもは成長という言葉の中で、色んな大切なものを積み上げていく。
固まったりしないし、崩れても意に介さない。

そうやって、大きくなっていく。
世界は広がっていく。

大切なものは、教えるよりも感じたり。
経験したりすることで、自分の世界の地図にすればいい。

子どもは大人になれるが。
大人は子どもにはなれない。

当たり前な今更な部分を、凄く痛感した映画だった。

大人の今を落胆してるわけではないが、
あーいう風に生きるには、今は随分余計な知識や経験が邪魔をすると
そんなことを想うのです。



これから夏休み。
ボクが小さな頃に過ごした青森や福島。

関係があまり良くはなかった福島の祖父母の家。
正直、青森よりも自然しかなくて。
毎日が冒険のようだった。
今思い出しても、一本の道の点在するお店1つ1つを想いだせる。

あぜ道も、川も海も、虫も、蛙もなにもかもが。
よく考えたら、夏休みといえば、福島な思い出。
母方の実家だったから、父方よりは夏休みの過ごし方としては
自然だったんだろう。

あの景色は、津波で飲まれ。
常磐線ギリギリのあの母屋は、福島第一原発で避難区域に指定され。
おそらく立ち入りすら曖昧な現状になっていると聞く。

憂いの話は、書いていても言葉に詰まる。

良い夏休みを。
32歳の夏も1回しかないが、11歳の夏も1回しかない。

冒険というのは、海賊だけの話じゃない。
自転車でも、自転車で行けない場所でも、ドキドキがあったら、冒険だ。

ドキドキするのに、努力したり金使ってるようじゃ、子どもに勝てないわな。

弟の旺志郎は、しり上がりに良くなる。
まぁフィルムだから順番どおり撮ってないとは想うけど。
物語が進むに連れてぐんぐん良くなる。
それも成長かもしれない。

内田伽羅のスクリーン映えには圧巻でした。
是枝監督だから、より良かった。
今回の出演の子どもたちが、あまりに自然すぎてドキュメンタリーに見えるぐらい。
そうか、そういう部分もあるのかな、深読みか(笑

こういうあれこれ見終わっても、考えが溢れるのは良くないが
気持ちはいい(笑


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